非武装中立(ひぶそうちゅうりつ)とは、理念として他者を傷つけることを否定するが故に、自国の防衛のためであっても戦争に反対し軍事武装を放棄して国際的に中立主義を貫ぬく事で平和を維持していこうという考え方である。
非武装中立論とは、日本だけに見られる独自の政策論ではなく、欧州においても社会防衛論として、軍事による国土防衛を放棄し、自国が外国軍隊によって占領されたとしても、他の手段(デモ、座り込み、ボイコット、非協力等)によって他国からの領土支配を拒絶するとする政策論が知られている。
ガンディー、キング牧師の非暴力主義の活動が類似した思想の例として挙げられることもある。(詳細は各ページを参照)。
1867年の建国時点では永世中立国だったルクセンブルクは、同時に非武装中立政策を行っていたが、第一次世界大戦・第二次世界大戦でドイツに占領されたため、1949年にNATOに加盟し、永世中立および非武装中立政策を放棄した。 なお、2008年現在も非武装中立を行っている国としてコスタリカがよく挙げられるが、コスタリカは常備軍の設置を禁止しているだけで、非常事態には徴兵制を敷き軍隊を組織することができる。また、事実上の国防軍である国家警備隊及び地方警備隊は重火器等を保持し、警備隊への予算の割り当ては隣国ニカラグアの軍事費の三倍(2005年 日本外務省のデータ)となっているなど、実態は非武装というイメージからは乖離している。また、中立という観点からは、安全保障をアメリカ合衆国に依存しており、さらに米州機構のメンバーでもあり、1965年に起きたドミニカ内戦の際には米州平和維持軍の一員としてドミニカ共和国の立憲派政権を転覆させるために、ラテンアメリカの反共国家の軍隊と共に武装警察を派兵したこともある。このような事情から、国際的には中立国として認められない(同国の事情については、コスタリカも参照)。
日本 [編集]
日本の非武装中立論者は日本国憲法の前文と第9条を根拠に自衛隊と在日米軍が憲法違反だと主張している。そして日本の安全保障政策として、自衛隊の廃止、在日米軍を肯定する日米安全保障条約の廃止を主張している。近年では「9条の会」「9条ネット」と呼ばれる護憲団体が、日本国憲法9条の理念を国際的に広める活動をしており、現時点では自衛隊などの防衛力を容認しつつ最終的には軍備の永久放棄を視野に入れている。
非武装中立論者には護憲派が多く、自衛隊や在日米軍の存在を明白に肯定するための第9条の改憲に強く反対している(ただし、第9条改定反対派のすべてが非武装中立論の立場に立っているわけではない)。かつて、1979年に森嶋通夫LSE教授(当時)が独自の理論による非武装中立論を発表し[1]、翌1980年には、日本社会党の石橋政嗣委員長(当時)も自著の中で「非武装中立論」を展開した。
反対意見 [編集]
非武装中立に対する、次のような批判や指摘がある。
戦争当事国の相手方が自国の領域へ侵入することを、武器による抵抗をせずに受け入れることは、戦争当事国の一方(すなわち敵側)だけに加担することになり、これは中立とはいえない。よって、自国が戦争に巻き込まれないために、あるいは利用されないために、国際法的な観点から国土防衛の法的義務が課されていると解され、これは当然に軍事防衛を前提としているものである。
そもそも、戦争当事国の一方に領土、領海、領空の通行を許可することは、もう一方の当事国に対する戦争行為にあたる。たとえば、アメリカがアフガニスタンに空爆したとき、パキスタンは領空の通過を許可した。このパキスタンの行為は、パキスタン軍自体がアフガンニスタンに直接攻撃せずとも、アフガニスタンに対する戦争行為にあたる。非武装下で、戦争当事国一方が軍通行の要求を出してきた場合、拒否できなくなるため、以上の理由から国際法上、中立を保つことは不可能である。したがって、地上では非武装中立は無意味な主張である。
社会防衛論を現実に実行するにさいしては、国民による不断の努力が求められるが、占領軍による逮捕、拷問、処刑、密告勧奨などの恐怖支配によって、領土支配拒絶運動が分断化されたり沈静化されてしまって失敗する恐れがある。結論的には、社会防衛論による戦争への抑止効果は、一般的な軍事力による抑止効果と比較して極めて微弱であるとされ、なんら戦争回避の効果的な手段となり得ない。
国際社会における外交は、経済力、軍事力など、国家の総合力を背景に行われるものであり、軍事的空白を自ら生み出すことは、紛争を招き国際的な安全すら危険に晒すことになる。日高義樹のワシントン・リポートでのインタビューに応じたアメリカ海軍の士官は「歴史的に見れば軍事的な空白が生まれたところに紛争が生じている」とコメントし、勢力均衡の維持が平和につながるとしている。
なお、戦後日本の非武装中立論の形成に大きな役割を果たした、社会党左派系の社会主義協会に属した山川均の非武装中立論は、永世非武装国家を志向したものではなかった。山川は日本が復興する間の非武装を説いただけで、ソ連の脅威を十分に認識した上での将来的な武装を認めていた。軍備偏重であった戦前の社会を反省し、社会資本を復興に集中するねらいがあったとみられている。
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